書評:百貨店サバイバル(日経ビジネス人文庫)
日経ビジネスの特集記事をまとめた文庫本「百貨店サバイバル」を読んだ、当初てっきり若手記者が書いたものだと思い、いろいろ調べていると微笑ましく^^読んでいたのだが、さっき著者紹介をみて1990年から小売業を担当している、40代半ばのベテランだと知って愕然とした、17年も小売業を担当している割には百貨店のことはよく知らないようだ。(写真は専門店ビルになった新宿三越の正面)
●代官山映像・記事2007.01、裏原宿映像・記事2006.07
百貨店のマーチャンダイジングには2種類ある、そのことをキッチリ説明していない、ひとつは伊勢丹のようにバイヤーが主体となり、日本はおろか世界中を駆けずり回って、自分たちのリスクで買い付けをして商品を並べ販売することだ、全部自分たちだけでは集められないので、代官山とか裏原宿・表参道のような高感度なトコを歩き回り、商品をみることもあるときく。
もうひとつはこの本に書かれている台湾の新光三越のように、国内外を歩き回ってお客様に選んでもらえるテナントを入れることだ、どちらでも良い、ただ後者は日本では玉川高島屋ショッピングセンターで成功した、高島屋の関連会社・東神開発のようにショッピングセンター形式を取ることが多い、秋葉原から出るつくばエクスプレスの場合、流山おおたかの森に東神開発のショッピングセンターが、隣りの柏の葉に東京ミッドタウンとラゾーナ川崎を開発した三井のららぽーとがあるが、前者が東武野田線と交わるという利点を差し引いても後者を引き離している。
●流山おおたかの森、玉川高島屋、柏の葉
●東京ミッドタウン、ラゾーナ川崎
三越とかそごうが何故駄目なのか...それは自分たちのリスクで買い付けも行わなければ、お客様に選んでもらえるテナントを入れるという発想がない、シャネルとかルイ・ヴィトンのような高級ブランドか世間に既に認知されたテナントを入れれば良いと勘違いしている、それで新宿の三越の1階正面みたいにティファニー、ルイ・ヴイトンそしてGAPなどが並ぶというテイタラクになるわけだ、そのことがこの本にはキチンと書かれているとは言い難い。
そして三越の強さの源泉は本店外商部にある、ココだけは腐っても三越...凄い、彼らが3000億円と新宿伊勢丹の2500億円を上回る売上を引っ張っているのだ、そのことには残念ながら一言もふれていない、三越の弱点はマーチャンダイジング...商品力と著者も書いた財務体質であって、著者が言っている営業力ではない、3000億円を叩き出す営業が弱いわけがない、なので伊勢丹と三越の統合の成否は、伊勢丹が三越のお帳場システムを壊すことではない、伊勢丹のマーチャンダイジングをいかに三越の強い営業・本店外商部、すなわちお帳場システムに載せることにある。
百貨店は一から三までマーチャンダイジングである、四が営業力で、五にようやく全体の規模の経済ということになる、最近東京の百貨店を回ってマーチャンダイジングが強いと感じているのは、新宿伊勢丹と東京駅大丸のふたつだ、大丸と統合した松坂屋は上野の店をみて駄目だと思った、そごうはいまだに高級ブランド頼りと店が駄目だ、相方の西武百貨店は売上は上がっていないようだが、有楽町店をみる限りプレゼンは悪くない、高島屋はどうか...サービス重視は良いのだが、新宿店をみる限り三越よりマシという程度で、大丸より遙かに劣るという印象だ。
※新宿高島屋再評価...伊勢丹と闘う店に変身@2007.12.30
(執筆:2007年12月28日、23時50分)
《追記》
> 大井町、川崎←丸井が撤退しヤマダのLABIになった大井町とか、細々とさいか屋がある川崎はスルー^^です、大井町については拙ブログ記事をご覧ください <(__)>。
《追記2》
> 気力・体力が充実←逆にイライラしている時の方がラッシュしますネw、そして情報は不完全でもアウトプットしないと、頭の中で腐ると聞いております、この記事が13本目...縁起悪うということで29日に日付変更しますた。
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Comments
ふと思ったのですがりんかい線が乗り入れ、大井町線が溝の口まで乗り入れるようになる大井町とか、ラゾーナで盛り上がる川崎とかで百貨店の撤退や実質テナントビル化している状況などはどうかかれてるんでしょうか?
Posted by: brother-t | December 28, 2007 11:22 PM
年末に怒涛のラッシュで、気力・体力が充実されておられるようですね。
Posted by: 音次郎 | December 29, 2007 09:02 AM